ここが魔境
「冠を持つ神の手」の雑談と雑談と雑談とたまに二次創作テキスト。ほぼ王子。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


というわけで支援というよりはいつもの延長です。ZCQ!


王子に指を絡めて誓ってもらったよ!
という妄想。正確にはED後だから元・王子になるけど気にしない
(素直に名前でいえばいいんじゃないの)
(それができれば苦労しない)

※愛情B後です。



 一緒に散歩がしたい。
 レハトがそう言い出したのは共に昼食をとった穏やかな午後のことだった。私はこのところ城で雑務に追われていて、情けないがあまり彼女と過ごす時間もとれていない状態だった。明日からはまた領地となる場所へと向かわねばならない。様々な候補の中から選んだ土地はレハトの故郷に程近く、ここから鹿車で一週間ほどはかかる。そうそう簡単に行き来できる距離ではないので、用事は一度にまとめて片付けたいとなると、必然的にあちらでの滞在は長くなる。正式な婚姻の申し入れを終え、いよいよ彼女を迎えるための準備だ。これが片付けば、次は彼女と共に赴くことになるはずなのだ。
 共に過ごすために、今現在の一緒にいる時間を削っているというのはなんとも皮肉なものだが、必要なことには違いない。それが言い訳でしかないとはいえ。ならばせめて、彼女のささやかな望みくらいは叶えねばならない。私に否と言えるはずもなかった。そもそも、出立前の最後の日は彼女のために空けていたのだから。

 護衛をつれ、塔を出る。中庭へと向かうのかと思いきや、レハトは道を逸れた。警護中の衛士がちらちらとこちらを見る。正式に婚約した私たちの関係は秘密でもなんでもないのだが、やはりどことなく居心地は悪い。何でもなかったと堂々と振る舞うには私は小心すぎる。こうなるに至った経緯には、やましいことだらけなのだから。だが、逃げるわけにはいかない。
 突き刺さる視線を避けるようにレハトの隣を歩く。どこに向かうのかと訝ったのが顔に出ていたのだろう、レハトが前方を指差した。もっとも、塔の裏手まで来たら広がる湖面以外は何もないのだが。
 レハトの指し示す先で、湖が太陽の光を反射し光っている。
「湖が見たかったのか?」
 訊ねると、頷きが返ってきた。どうしてと問うより先に、彼女が視線を遠くへ投げ、そちらに何があるのかと考え気付く。明日になれば私の向かう方角、レハトの故郷のある方角だ。
「……懐かしいか」
 思わずそう口にする。してから、愚かな問いかけだったと気付く。懐かしくないはずがないのだ。レハトの心にどれだけ故郷があるのかを知っていたからこそ、私はあの地を領地に選んだのではなかったか。
「すまない。いらぬことを言ってしまったな」
 私の詫びにレハトが少し困ったように微笑む。その表情にすら、申し訳なく思う。不快な思いなどさせず、純粋に彼女のためになるようなことをするのはどうしてこんなにも難しいのか。単に私が至らぬだけ、なのか。
 結局、私が悪いのだ。
「じきにお前もあちらに向かう日が来る。私もできるだけ早く準備をして……」
 お前を迎えよう。その言葉が意味するところに気が付くと、急に羞恥に襲われた。これでは私が一刻も早くレハトと結婚したがっているように聞こえる。いや、実際それは私の本心なのだが、故郷への彼女の想いにかこつけて自分の欲望を遂げようとあからさまになっているようではないか。軽蔑されても仕方がない。
 レハトの眼差しが怖くて、湖へと視線をやる。
「後悔していないのか」
 返事を聞くのは怖かった。だが、彼女のためには聞いておくべきだ。もしも彼女がここまでの選択を悔いているのならば、今ならまだ、なかったことにできる。私は、私ができる限りのことをしなければならない。もしそれが彼女の選択ならば、私は違う形で彼女を守るだけだ。
「私がどのような奴なのかは分かっているだろう。今ならまだ」
 と、レハトが私の手をとった。思わず彼女の方へと向き直る。
 怖いぐらいに真剣な顔をしたレハトが、私の手に彼女自身の手を重ねてきた。胸の高さに持ち上げられ、指の間に指が入り、握りこまれる。つられるように握り返して、組み合わせられた手の形にはっとした。
 ずっと一緒だと囁かれ、抱きしめたい衝動に駆られる。
 だが、本当にいいのだろうか。
 継承権を放棄したとはいえ、彼女は寵愛者だ。何を好き好んで私などに。こんな、こんな私にとって都合の良い。これがアネキウスの思し召しだとでもいうのか。神のなさりようはあまりにも理解しがたく、卑小な私は己が都合よく見ようとしたがる。レハトが望むのならば。レハトが望んでいるのだから。ならば、何の問題があろうか。
 山と積まれた問題を体のいい言葉で覆い隠し、私は堕ちる。
 それも一人ではなく、彼女を伴ってだ。なんと卑怯なことか。
「天におわします我らが父母たるアネキウス」
 神はこの様をどう見ているのだろうか。
「我らここに祈り、証を立てる」
 選定印の輝きの下、レハトの真剣な目が私を見据える。
 喉が鳴る。握る手に力がこもる。
 いいのか。後悔しても知らないぞ。体の中で身勝手な思いが駆け巡り、その願望のままに誓いの言葉を口にする。これがどのような意味を持つのか、互いに分からぬはずがないのだ。本当にいいのだな。誓いを盾にして、私はお前を決して離さないぞ。 そのように簡単に大義名分をほいほいくれるのならば、存分に利用しようではないか。本気ならば、こちらも本気で応えてやる。忘れるなよ。決して忘れるなよ。お前が言い出したことだ。機会ならば今まで散々にあった。逃げなかったのはお前だ。手を差し出したのはお前だ。望んだのはお前だ。そして、私も望んだ。最早、逃げ場などないぞ。いいのだな。
 表面上は平静を取り繕って低く、誓いの言葉を紡ぐ。その実、私は歓喜していた。その一言一言が、彼女を絡め取り、私に縛り付ける言葉になるのだ。そして私を彼女の軛とする。私が望んでも得られなかったが、彼女が望んだのだ。こんなにもはっきりとした形で、誰に憚ることなく、彼女と共にあることが許される。アネキウスにかけて誓ったこの関係を、誰が文句をつけようか。
「……その、御名にかけて、我らここに祈り、証を立てる」
 結句まで辿り着くと、ふっと組み合わせていた手が緩んだ。私はレハトの指の間から自分のそれを引き抜き、そのまま彼女へと手を伸ばし、抱き寄せた。
「これで文句はないだろう」
 挑むようにそう言うと、実に嬉しそうな笑顔が返ってくる。酩酊するような幸福感に気が大きくなっている私は、そのまま彼女に口づけた。




09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

プロフィール
遠野 刈
Author:遠野 刈
ぐだぐだしてます。
かもかて中毒。
王子だいすき。

キット制作名:tnk
カテゴリ
最新記事
無礼会を終えて (02/01)
無礼会 (01/29)
チャット会計画中 (01/11)
あけましておめでとうございます (01/01)
譲れない想い (06/10)
サーチ

Ring
同盟




応援中


レハゲ制作委員会@ ウィキ

月別アーカイブ




Copyright © ここが魔境. all rights reserved.
Photo by clef      
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。