ここが魔境
「冠を持つ神の手」の雑談と雑談と雑談とたまに二次創作テキスト。ほぼ王子。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


かもかて二次創作(という名の超妄想)。#1-2-2
王子愛情B前提の第2話の続き。2話はここまで。

2-1


 主人であるレハトが選んだ相手ならば、ローニカに反対する権利などない。しかし、よりにもよってという思いは止められなかった。クレッセは王配の器ではなかったものの、有害な人物でもなかった。むしろ、思わぬ栄誉が転がり込んできたことに色めき立ったヨアマキスの者の中では、利権を漁るような真似もせず大人しいものだった。だが、その息子ときたら、母の政務を手伝うでもなく、貴族達との交流に励むでもなく、嫌味を言うばかりかと思いきや、怪しげな者に耳を貸して寵愛者を害そうとした。王権への挑戦、国を揺るがす大罪だ。レハトが庇わなければ、今頃処刑されていたものを。どうしてか、結婚という話になってしまっていた。
 思わぬ結果に対し、リリアノはむしろ安堵した様子であった。新王であるヴァイルも、婚姻によりもう一人の寵愛者が親族になることに興味を示しているという。サニャはローニカと同じく、納得のいかない風であったが、もちろん彼女には発言権などない。
 無事に篭りを終えたレハトは舞い込む手紙や贈り物の山に辟易している様子だったが、無視して捨て置くことをせず手紙の一通一通に目を通し、必要なら断りの返事を出していた。彼女がそこまでする必要はないとローニカは言ったが、こうと決めたら聞かないのが彼女だった。婚約者の体面を気遣ってのことなのだろうか。そう考えると、言いようのない憤りを感じる。どうして、そこまで。アネキウスのなさりようは、時にひどくバランスを欠いているように思う。己の見てきた四人の寵愛者のことを考えるとローニカはため息をつきたくなる。起きてしまったことは今更覆せないが、この先も運命は縺れるのだろうか。それを見届けるだけの時間は残されていないが。
 若い侍従がお茶を運んでくる。ローニカは受け取ると自ら給仕する。色や匂いに異常がないのを確認すると、ようやく手を休めた主人に差し出す。礼を言ったレハトがお茶を楽しんでいる間、彼女に気を配りながらも卓上の品物や書状をチェックする。書き上げられた返礼の書状が予想外に多いことに眉をひそめる。
「あまり根を詰められますと、お体に障りますよ」
 寵愛者はなまじ能力が高いため、放っておくとやりすぎることがよくある。並の人間の限界を超えても気付かないらしい。レハトは去年、それで寝込んでいる。おまけに彼女は、黒の月に起きたあの一件以来体調が優れない。篭りの時が通常よりやや長引いたのも、いくらかそこに原因があるとローニカは考えていた。大事な時期に死にかけて、こうして無事でいるだけでも奇跡のようなものだ。蒼白な顔をした王子に抱えられた、それよりも白い顔をローニカは決して忘れない。あの時は、よもやこんなことになろうとは思ってもみなかった。
 ありえるはずのない二人目の寵愛者の知らせを受けた時から、ずっと、意外なことの連続だったのだが。
 来訪者を知らせる鈴が鳴る。部屋の隅に控えていた若い侍従が飛んでいこうとしたのを制し、ローニカは自ら出向く。もしもタナッセならば威嚇して追い返そうかという考えが頭の片隅を過ぎる。レハトが不調とまではいかずとも疲れていると言えば、あの若者なら強く出られまい。しかし扉の外にいたのは落ち着かなげな青年ではなく、国王付の侍従だった。そもそもが、あの時よりタナッセは人目を憚ってかこの部屋を訪れていないのだが。
 国王からの言伝は、主人を喜ばせるものであった。主の喜ぶ顔が見られるというのは、仕える者としても嬉しいのだが、内容そのものは不本意である。レハトの元へと戻る僅かの間にローニカはくぐもった息をこぼす。そして胸の内を悟られぬよう、表情を作る。
「ヴァイル様から、夕食のご招待がありました」
 常のように淡々と伝える。新王は多忙ながらも、こうして同じ寵愛者との時間をたまに作る。レハトは継承権を放棄して後、儀式に関わることも少なく、部屋で過ごすことが多い。警備上の都合と、今も崩しがちな体調を考慮してのことだ。
 分かったと頷くレハトがこれから見せるであろう表情を思うと、嬉しさと嬉しくなさが入り混じった気分になりながらローニカは適当な理由をつけ、若い侍従を退出させた。そして、主人に告げる。
「タナッセ様も同席なさるとのことです」
 その名前を耳にした途端、明らかにレハトの表情が変わった。頬が紅潮し、瞳が輝く。文字通り恋する者を思う姿だ。何も知らない若者が見たら心を惑わしかねない可憐さを、微笑ましく思うと同時によりにもよってと苦々しくもなる。ヨアマキスは本当にろくでもない。
 夕食の時刻にはまだ早いというのにレハトがそわそわとしだす。
「サニャを呼んで、お召し変えの準備をさせましょうか」
 勢い込んで頷いてから、我に返ったようにまだ早いから大丈夫だと言い直すレハトに、ローニカは笑みを向ける。結果的に面白くない出来事になったとはいえ、素直さに陰りが見られないのは良いことだ。
「衣装を選んでいれば、時間などあっという間でございますよ」
 そうなる確信を込めて言うと、ローニカは最早省みられなくなった書状を片付け始めた。


09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

プロフィール
遠野 刈
Author:遠野 刈
ぐだぐだしてます。
かもかて中毒。
王子だいすき。

キット制作名:tnk
カテゴリ
最新記事
きゅうしゅうねん (06/02)
無礼会を終えて (02/01)
無礼会 (01/29)
チャット会計画中 (01/11)
あけましておめでとうございます (01/01)
サーチ

同盟




応援中


レハゲ制作委員会@ ウィキ

十年祭
月別アーカイブ




Copyright © ここが魔境. all rights reserved.
Photo by clef      
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。